2018年6月2日土曜日

夏祭りとイベントは別物。来場者の倍増は準備する人出演する人が住民なればこそ①

夏祭り子ども神輿の写真
夏祭り子ども神輿

毎年夏になると、連れ合いや友人を誘って祭りを見に行くことを、ここ数年来欠かしたことが無く、それがひとつの行事のようになっていました。

例年は夕刻に出かけて、受付けで福引券を投函し、ほろ酔い機嫌で演芸や演奏を見物し、外れ福引券を手に、打ち上げ花火の音に振り返り帰路につく。行事はそれでおしまいになります。


自治会の夏祭りを2倍の集客に


目次


今年ばかりは早朝からせわしくて、夕方には「こども神輿」を先導し、それやこれやで「児童合唱」や「餅まき」は見逃したものの、こればっかりは毎年欠かしたことのない「演芸」を覗き、うずくまって遠慮がちに弁当を開き、ご招待したお客様をもてなし、名残の花火の下をさまよい、ややくたびれた足をひきづりながら家路につき溜息をつく。

今でも目をつぶれば、こどもに手を引かれてきたお母さん、子連れで旧交を温めあうお父さん、夜店の孫の手つきを気遣う老夫婦----こどもも大人も「自分たちの祭り」として、心の底から楽しんでいる姿を瞼の内に描き得るのです。

夏祭り実行委員長に名乗り!

提灯
提灯



1.「やめたら?夏祭り」

総会での若い人の発言に、「さもありなん」という想いで私は発言の機会を窺っていました。すかさず、「少なくてもええやないか!」の元会長の発言でその議論は尻つぼみに。

毎年、「〇〇太鼓」「〇町民謡会」「▽▲ライブ」など趣向を凝らしたイベントではありましたが、開会宣言しても数人の子どもが走り回っているだけの閑散とした会場、眺めているのは準備中の関係者だけという
状況が何年も続いていました。

7時頃からボチボチ会場に足を運ぶ人が増えてくるのは抽選券投函〆切り間際だからなのですね。お目当ては「福引き」です。40代~60代の女性、中高生がほとんどです。それ以外の年齢層は祭りに興味がないのかもしれません。

十年前まではそれなりに賑わった夏祭りでした。みんな若かったこともあります。

夏祭り役員準備の写真
夏祭り役員準備の図

夏祭り櫓組み立ての写真
夏祭り櫓組み立て

団地が出来た当時、櫓は住民が丸太を組み立てていましたが、このころはもうレンタルになっています。

夏祭り盆踊り練習の写真
夏祭り盆踊り練習

盆踊りの練習は毎週行われていました(浴衣姿の女性が指導)。津音頭、炭坑節、片田っ子音頭、きよしのズンドコ節でした。来るのは女性と子ども、主に文化委員だけでしたが、本番になると他の地域からも踊りに来ました。


夏祭り子ども会の写真
夏祭り子ども会

子どもが今の10倍くらいいたので「子ども会」も活発、ゲームも多彩、多くの子どもでにぎわいました。


夏祭り本部側テントの写真
夏祭り本部側テント

会場の広場でテント張りする組長さんも総じて若く、参加者も多かった。


夏祭り屋台側テントの写真
夏祭り屋台側テント

北側のテントは、受付、福引、ビール、スーパーボール、などの夜店。種類としては物足りないものでした、その昔は炭火で焼いたものですがコンロがいつの間にか姿を消していました。衰退の始まりといえないこともありません。


夏祭り音響テント写真
夏祭り音響

盆踊りは音響の良さが重要です。スピーカーは500w。音源はカセットかCD。浴衣の係も”華”を添え、メインは数十人の浴衣美人の盆踊りでした。


夏祭り「ストラックナイン」の図
夏祭り子どもゲーム

開会前から子どもコーナーは開店し賑わっていました。※「ストラックナイン」=投げたボールがどの穴に入るかで景品がつくゲームです。


夏祭り提灯飾りの写真
夏祭り会場の図

提灯は夏祭りの雰囲気を盛り上げる重要なアイテムです。近くの配電盤から電線を引くもので、会場を囲う提灯が点灯すると若い女性もドッと繰り出しました。


自治会夏祭り盆踊り練習記念写真
自治会盆踊りスナップ


「私?12年前から踊っています。最近は『足が痛い、腰が痛い』って参加できない人が多くてさびしいです。でも本番になると井戸町や片田の人たちも、お孫さんが団地に住んでいるからゆーて、たくさん踊りに来てくれるのよ」

「一番好きな踊り?そうねえ・・・キヨシのズンドコ節かしら!」

盆踊り子どもの部は「片田っ子音頭」、大人の部は津音頭、炭坑節、キヨシのズンドコ節で、近隣からも老若男女参加し、自然に2重3重の輪になったものです。伝統芸能もない新興団地なので「イベント感」は否めませんが、「福引」「花火」には500人くらい来場したかもしれません。

-----10年後の今、これらの写真はまるで万華鏡を見ているようで色あせることはありません。、


2.祭りとイベントは別物

子どもの数が減少の一途ですから年々来場者が減ってゆくのはしかたのないことかもしれません。高齢者は来てくれない。この団地は大半は地方出身者ですから隣近所の交流がなく、文化委員でさえお互い名前さえ知りません。

だからこそ「ふれあい・交流」の場として夏祭りが始まったわけですが、盆踊りが廃止され、よそから出演者を招き手っ取り早く済ませるようになります。それがよけい「ふれあいの機能」を働かせなくさせることになります。

夏祭りはその多忙さから役が敬遠されがちで、他の役のクジに外れた人が流れてきます。今年の委員12人中8人はこれまで「役」でしか夏祭りに行ってないことがわかりました。全世帯の20%くらいしか参加しない夏祭りを垣間見た思いです。

「このわびしい夏祭りを何とかしたい!」の想いから、私は組当番を機会に「実行委員長」を名乗り出ました。委員11人を前に一応は聞いてみました。「どなたか委員長になる方はいませんか?」ーーーいませんでした。

今年は大半が70才前後で50代が3人。この構成で住民が大勢集まる夏祭りにするのは正直シンドイ話です。前例主義でやっていたら今までと同じ閑散とした祭りになってしまいます。


なぜ住民が夏祭りに来ないのか?

レンタル会社に丸投げだから

それでは「自分たちの祭り!」という意識が育ちません。住民同士のコミュニケーションが広がってゆかないので祭りへの期待が育ちません。

出演者も外部から招いていたから

地域外から出演者を招いても、顔を知らない外部の人の演奏を見に行く住民は少ない。「何かよその人が勝手に盛り上がっている感じ・・」に映るだけ。

「祭りの主役は子ども」という認識が希薄

舞台の上で来賓挨拶とか祝電披露など、セレモニーの夏祭りなんて興ざめです。聞かされる方にはどうでもいい話です。舞台は未来を担う子どもが主役にならなきゃ祭りそのものが存続しないのです。

時を選ばず実施した

10年くらい前までは8月に行っていました。それをよその花火大会等に重ならないよう7月中旬に前倒ししてしまった。かえって地元の祇園祭と重なってしまいそっちにいってしまう。


毎年出し物が変わるイベント

毎年、目先を変えるだけでは住民にうけいれられるイベントにはなりえません。イベントも祭りも娯楽にはかわりないのですが、イベントを内発的に改革してゆかなければ廃れていくのは当然といえます。

3.地域に眠る宝物を探す

「イベント」は、住民の中から湧きあがってくるものを育ててゆくことです。地域を歩いてみると見つかるもので、倉庫の天井に昔、手作りした樽神輿が”寂しそうに2台”並んでいるではありませんか!

これを「復活」させることにしました。しかし困ったことに担ぎ手の子どもが少ない。この町には対象となる小学生は80人しかいません。「土日にグラウンドでソフトボールクラブが活動している。頼んでみよう!」となりました。

近隣の子どもも参加する混成チームのようです。チームの世話係には住民のお母さんもいます。若い人は能力が高いしフットワークも軽い。トントン拍子で話が進み、監督さんは「子どもの前で説明して下さい」。

グラウンドに出向き、試合が終わるのを見計らって地面に輪になって座っている20数人のちびっこ選手を前に、私は話しました。「お神輿を知ってる人!」と尋ねると、『ハーイ!』と一斉に返ってきます。お神輿を担ぐ行事なんて津祭りにパレードだけなのに。

4.祭りの主役は子ども

このことを役員会で報告すると、郷里が三社祭りの人が「50人以上集まらないと様にならない!」。それで役員・保護者同伴で何とか確保することにしました。

子ども神輿だけでは間が持ちません。「会場で大人にも担いでもらったら?」という声もでましたが、担ぎ手に適する30代~50代男性はそもそも祭りには参加しません。

「たまの休みぐらいはゆっくり寝ていたい」「誰が好き好んでしょうもない祭りにいくかい!」というのが本音でしょう。委員でさえそうなんでこの辺が分かっていない。

そこで小学校へ出向いて「合唱」をしていただけないか頼みました。「ここで生まれ育った子どもたちが将来この町をでて遠くに住むことになっても、『夏になったら帰りたい』と思えるような夏祭りを残したい」と訴えました。

「分かりました。地区係の保護者に話してみます」女性校長の訴えに共感した保護者も集会で発言し、合唱に参加する子どもは34人になりました。夏休みに入り郷里へ遊びに行く子どもも多い中でよくぞ集まってくれたものです。

祭り当日郷里の氏子総代に頼んで鉦や太鼓、拍子木まで借りてきてくれる人まで現れました。お神輿は八乳合神社のお祓いを受けて、ちびっこ28人が役員・保護者を従え賑やかに、わっしょい掛け声勇ましく、集会所から会場まで練り歩きました。

それでも哀しいかな道行く人はまばらで、もしもおひねりいただけば「○○さんに福あれ!」と神輿持ちあげ祝うのに、路上は写真撮りばかり。(私は正直意気消沈していました)。

ところが会場着いたら人波が溢れていたのです。予想を超える人が来てくださいました。(この人混みが見たかった!)

夏祭り子ども神輿復活の写真
夏祭り会場についた子ども神輿


日昏5時にもかかわらず300人以上いたのではないでしょうか。夜店に数十人も並ぶ光景も初めて見ました。「こんなに子どもがいたなんて!・・・この団地には小学生は80人しかいないのに」(酒店主)。お神輿は、ここで会場を一巡し万歳三唱する予定でした。


夏祭り会場に住民多数の写真
夏祭り会場に住民多数

「餅まき」

どれくらいの餅が必要かまったくつかめないままの実行です。ソフトボール部の子どもらですからボールを投げるようにまいてしまった。まさかキャッチボールのように投げるとは想定外でした。

ともかく、数百個の餅が投げ終わるのはあっという間でした。この3倍くらい用意しておかなかったのが残念ですが後の祭りでした。「餅まきはこれからですか?」と子どもに手を引かれてきたお母さんに尋ねられ、申し訳ない気持ちで一杯です。

慣れていない委員らは餅まきの最中にお神輿を「いたずらされる」と心配し、軽トラで倉庫に運んでしまいました。昔、住民が自作した樽神輿、展示しておけば物珍しや思い出話にもなったのに誰がいたずらなどするものですか。


祭りの寄付は紅白ポスター

厳しい経済状況下、寄付金は件数金額とも過去最高を更新。これまではA4紙にプリンタで印刷した貧弱なものを掲示していたのを紅白ポスターに大書きし貼りだしました。32人の心付けに”宣伝”でお返しするのがお礼というもの。商店や企業は「地域の存在感」を示し、その「寄付金」は地域に循環、経済効果を生み出します。


夏祭りに32件の寄付の写真
夏祭りに協賛・寄付32件

児童合唱

小学校児童合唱は初めてのことです。先生方もぞくぞくやってきます。子どもが出演すれば保護者がついてきます。遠くのお爺ちゃんお婆ちゃんも来ます。



夏祭りに初の「児童合唱」の写真
夏祭りに初の「児童合唱」

ステージはパレット

レンタルなら20万。たった一晩だけのお祭りに、それはムダというものでしょう。太陽光パネルを置く台で工事業者からタダでもらっていました。

この”舞台”には委員会でも安全性を心配する声が出て、最終的には実際に会場に運び検証してもらうことに。板の厚みは15mm。レンタルの12mmよりも厚く、そもそも米俵など重量物を積み上げる台、危険な訳ないでしょ。

安全性がクリアされると今度は「見栄えが悪い」と難癖をつけたがるの人はいるもので、ここはじっと我慢するしかありません。紅白幕を掛ければいいだけの話です。悲しいことに当日はパレットの前に紅白幕を掛けるところまで頭が働きませんでした。


ステージの前にブルーシートを敷く

舞台の前はこれまでイス・机を並べていましたがブルーシートを敷きました。これも「子どもは履物を散らかす」「土足で上がる」とかいう始末。(それは杞憂だよ!)と言いたいところを押さえて、気が済むように「ビニル袋」を置くことにしました。

置いてみたけど土足で上がる子や履物間違う人もいません。ビニル袋は使われません。それどころか机にイス比べ、余裕で100人は座れます。片づけるのにも手間いらず、勿論経費もゼロで済むのです。



5.準備する人も出演する人も住民

祭りと言えば「夜店」。「スーパーボール」は過去の在庫が山ほどあるのに「新品を揃えないと苦情が来る!」とか形にこだわります。「水槽はブルーシート手作り」という私の主張を押し通しました。(約5万円の経費節約になりました)


夏祭り屋台に手作りプールの写真
夏祭りに手作りプール

木枠を組んでシート敷き、水を入れれば出来上がり。レンタルより広さは3倍。子どもは面白ければ手作りでも何でもいいのです。

「一円玉コイン落とし」「輪投げ」も採り入れました。ボランティアで若いお母さん方が参加して下さいました。運営をすべて子どもに任せればもっと盛り上がることでしょう。

齢重ねてはいても、歌、踊りその他演芸、町内にはこうしたキラキラ輝く方がいるものです。この方は夏祭りには涼しい色の浴衣を着てこられ、周囲を涼しい雰囲気にさせてくれます。

自治会夏祭りで「土佐っぽカツオ船」を唄う写真
夏祭り「土佐っぽカツオ船」

「合吟」も初めて。「練習成果を発揮しませんか?」とお誘いに快く応じて下さいました。高齢者が久しぶりの夏祭りに多くの人と連れだって参加。「今が一番若い!」老人会です。


夏祭り老人会参加の写真
夏祭り老人会が詩吟披露

6.福引会の仕方

司会は”華やかな浴衣の若い女性”に限ります(何かと出たがるおっさんお爺さん役員はいるものですが)これまではずっと”老人が並んでいた舞台”に浴衣美人が現れた。このサプライズに満員の会場はどっと沸きます。
観客にドキドキ感を味わってもらう抽選方法
空くじなし。


参加者全員に景品が当たる。
もらっても嬉しくない景品(テッシュなど)は出さない。


夏祭り福引抽選会の写真
夏祭り福引抽選会

景品特賞1万円2人、1等5千円商品券5人、2等オーブントースター20人、外れは高級おぼろタオル(ふわふわで柔らかく濡れても沈まない)。しめて総額20万。


まとめ

当団地の自治会会員は年間6千円も会費を払っています。組長は輪番制ですから夏祭り実行員会も初めて経験する人ばかり。新役員は一応昨年までの記録を参考に準備を重ねます。80%くらい前年度を踏襲し、少し自分たちの好みを付け加えるものです。

今年は思い切って80%修正しました。これによって20%台だった参加率が倍になりました。今まで閑古鳥が鳴いていた会場が一変しました。参加した住民世帯40%、600人を超えこれまでの2倍です
主な修正点は次のとおりです。
  • ステージのレンタルをやめパレットで代用(20万削減)
  • 福引景品は空くじなし、もらって嬉しい景品を出す。(総額20万)
  • 現金販売から夜店チケット制に変更
  • スタートは児童合唱で保護者の参加を見込む
  • 協賛者名はA4半紙から紅白ポスターで目立たせる
  • 机・椅子の代わりにブルーシートを敷き、客席増加
  • 子どもゲームの種類を増やし、係にはボランティア
  • 地域の宝を探し子ども神輿を20年ぶりに復活。
  • 地域外から招いていたのをすべて地域からの出演者に。
  • ステージバックが無しから、紅白幕と協賛者ポスター掲示。

ひとつ一つの項目は「当たり前」のことで今までそれが出来ていなかっただけの話でまだまだこんなものではないと忸怩たる想いでいます。さらに「夜店屋台」の充実、「花火」を見ながら飲んで食べての「納涼祭」を実施すれば住民の80%は「行きたい」と思うはずです。

毎年実行委委員が入れ替わり、その年の会長や委員長の意向が働くものです。伝統のない団地のイベントであっても、内発的に変革してゆくことで将来「祭り」になってゆく可能性はあります。

面白うてやがて哀しき夏祭り

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猿蓑温泉(さるびの温泉)は伊賀上野市大山田に開設された比較的新しい温泉です

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