2018年6月9日土曜日

ふるさとを実感できる思い出の自治会夏祭りの企画とつくりかた。②


松阪祇園祭り(三社祭り)でのお神輿を担ぐ若い女性らの写真
松阪祇園まつり

私、祭りは好きですが、祭りのことはホント分からなくて、日頃、こういう役についたことがないので戸惑っているんですけれども、考えていることをお話したいと思います。

夏祭りを大勢で企画するってすごく面白そうで「委員長をやらせてもらえませんか」って簡単に言うてしもたんやけど、これが実際シンドイ話ですごく後悔したわけで、こういうのを「後の祭り」っていうのでしょうか。


自治会夏祭りのテーマは「ふるさと」


目次

      1. 祭りは共同体をつくる
      2. 祭りは地域の構造を是正する
      3. 誰がやるのか?
      4. 何のためにやるのか?
      5. 祭りの中身は?


祭りは人々に「ふるさと」を実感させるものです。祭りには過去に根をおろして、そこから湧き上がるという面がありますが、イベントは自分で作るものですから、どういう方向にでも行くことができるという面があります。
祭りには季節があります。季節の折目に結びついています。

1.祭りは共同体をつくる

私が子ども時代を過ごした漁師町では、新年の観音祭、弓張り祭、初午、端午の節句、浅間祭、祇園祭、盆踊り、十五夜、八幡さん、と毎月のように変化の富んだ祭がありました。20年に1度のゴドクという演芸祭までありました。

中でも祇園祭は一番待ち遠しいものでした。御船という山車が町中を練り歩くのですが、朝早くから出かけて見にいったりしました。近所の友達と露店を見て回り、親からもらったわずかな小遣いでモノを買うことのなんと楽しかったことでしょう。

なんであんなに夢中になったのかいろいろ考えてみると、いろいろな理由があると思うけど、露天で珍しいものを見るのがすきだったのですね。紙火薬、鉄砲、いろんなものがいっぱい売られていて(実際は何の役にも立たない)、何を買うか思案する楽しさです。

もっと大きいのは、お祭りは構成されているということですね。お祭りの前には神社でお祓いがあるのですが、神主さんが奥の神殿の扉を開けるわけです。子ども心にそこには神さんが宿っていて1年に1度お出ましになり、祭りが終わると再び戻ると信じていました。


それからもう一つ、御船という山車を組み立てて、笛・鉦・太鼓の奏者が8人も乗り込み、それを大勢の屈強の若者が担いで練り歩くことです。そして奏者に合わせて高々と持ち上げたりするのですね。つまり奏者は「空中に浮かぶ」のです。地面から引き離すのです。

自然から自分の体をいったん引きはがすということは同時に、人間の抽象的な能力を活発にさせるということです。

御船の左舷側と右舷側が競り合い、横倒しになると奏者らは一心不乱に打ち鳴らし立て直しさせます。見物している人々がそれを見て、自然の中にあったエネルギーを感じるわけです。

この一つ間違うと命を落としかねないような祭りを、互いに命を預けあい一緒にやることによって関係が強化されてゆきます。

諏訪大社、愛媛のぶつかり神輿なども危険の最たる祭りですが、村社会における祭りの社会的機能が積極的な自己組織化にあり、祭りによって個別的な利害対立などが超越されていって村が一つにまとまる訳です。

祭りが終わった翌日の寂しさ。露店が引き払い、破れた提灯が道端に転がっています。今日から又来年の祭りが始まるとつぶやく大人たち、前夜の楽しさが忘れられない子どもたち。

夏休みが終わり、明日から学校という日の気持ちと似ています。その寂しさみたいなものが懐かしさになって、来年の祭りへの期待になるものだと思います。

村というのは、挑発しながら何かを立たせていく、しかもそれは長い時間をかけて村の共同体をつくっていくと、今度は周辺の地に根ざした共同体のほうに根を伸ばしていくというふうに村の祭りはあったと思います。

生活の中の祭りには神様もいたんだと思います。

今ここにいる私たちは自分の先祖あるいは死者によって生かされているのだという確認のようなものがあって、それは仏教以前から祭りの心になっていたんだと思います。

2.祭りは地域の構造を是正してゆく

祭りというのは上からの力と、下からの力がぶつかり合ってできるものなんですね。

一方的な企画力でもってできた祭りはどんなに規模が大きくてもその地域とは何のかかわりもないことがある。そのあたりをとらえなおすところから祭りを考えてみたいものです。

例えば、東日本大震災の後にいち早く祭りを復活させた地域は、復興そのものも進んでいったけど、逆に祭りができないところは、避難している人々が元の地域への思いというものが薄れてしまって復興もなかなか進まないという問題が起きています。

福島原発の事故で避難指示の出された浪江町で、8年ぶりに「相馬野馬追」が行われ、夏の風物詩が復活しました。

双葉、大熊両町からも騎馬武者が参加し、住民らは「震災前の風景に戻りうれしい」「ほら貝の音を聞いて泣きそうになった」と話します。



伝統行事の復活で離ればなれになった住民が集まるきっかけになったのです。

祭りが復活できない、存続できないということになりますと、例えばその地域に住むお年寄りの孤立とか、そういう問題、社会的なところにもつながってくると思います。

避難先からも見に来る人が多いことは、祭りというのは地域の構造を是正してゆく効果があるということです。ただし長い期間を置かないとその効果はみえません。

野馬追は平将門時代からといいますから1000年も続いていることになります。反復してゆくことによって効果があらわれれるのものなんですね。

3.夏祭りを誰がやるのか

実行委員会


自治会で夏祭りをやる主体は、役員さん組長さん総勢約80名で組織される実行委員会ということになります。

実質上企画・運営してゆく文化委員会としましては皆さんの力を借りないと成り立たないのはいうまでもありません。さらに祭り好きの人にもボランティアで加わって頂くよう呼び掛けたいと思っています。

ユウウツな人もおいででしょう。仕事で疲れて休みの日くらいはゆっくりしたいのは山々です。見た目ではわかりませんが、委員の中にはいろんな状況の人がいます。生活意識は様々で、それを押しのけてパッと何かやってという訳にも行きません。

しかしどうせやるなら楽しくやりたいですよね?お年寄りや子どもさんご婦人にできるだけ出てもらえるようお願いしたい。具体的な役割は5月の全体会議でご提案したいと思います。

4.何のためにやるのか

共感とふれあい


住民のふれあいと交流の場として行います。

住民が1年に1度一堂に集まって楽しい時をすごすのは、この町への共感をよりどころにしたふれあいの世界です。地域のコミュニティを作るうえで大切な行事です。「非日常の世界」への誘いでもあります。

「楽しもう」と思ってやれば楽しいし、「いやだな」と思ってやればつまらんものです。どうせやるなら楽しんでやった方がいいと思うのです。

実行委員会のいいところは、いろんな人とつながりを持てる点ではないかと思います。年齢や職業、家庭状況、価値観などが異なる人たちと知り合える場は、ほかにあまりないように思います。

南海トラフ大地震が起きたとき、近くに知り合いがいるのは心強いな、と感じると思います。多くの方に参加してしてほしいです。

運営する人出演する人すべて住民なればこそ「自分たちの祭り」と実感できるんで、レンタル業者に丸投げしたり、地域外から出演者を招くというのでは住民同士のコミュニケーションが広がってゆきません。本来の夏祭りの目的から逸脱しもはや放蕩するだけの催しになってしまうのです。

住民同士交流する中で、その仲間意識、躍動する気持ちが太鼓の音に表れ、みんなで歌う、みんなで踊る形になるのだと思います。

5.祭りの中身はどうするのか

祭りの中身


何でも去年と同じにする必要はありません。もし「いやだな」と思ったら変えてもいいのです。目的に合致していればいいのであって、「変えてもいい」と思えば「やらされ感」が薄まり、楽しさを感じやすくなるし、やり方が改善されれば他の人にも喜ばれるでしょう。

この町は地域の中に造られた団地で住民の大半は全国各地から移り住んだ人々です。記憶の再生として「ふるさと」に抱くイメージは各人各様でしょう。

生まれ育った地域や教育を受けた地域、両親の出身地などが基本となりますが、この町の良さを母体にした中身でなければ第2の故郷としての実りのあるふるさとにはならないような気がします。

ごくありふれた祭りであっても、将来を担う子どもたちにこの町への共感が高まり、祭りの担い手が将来町づくりの担い手になってゆくような中身にしてゆくことが重要です。

子どもたちは私たちの未来でもあるのです。私たちが若い世代に引き継いでゆくことが子どもたちに対して責任を果たすことになります。

あとがき


イベントであっても、うちから変えてゆくことで祭りになってゆく可能性がでてきます。
ただし、祭りをやるにはルールがあります。

道路を使用するにも規制があり、火を使うのにも調理するにも制限があります。安全性や事故の問題もあります。これらをクリアしないとできない夏祭りならではのややこしさはあるけど、それが又楽しみでもあり、やりがいでもあります。

これまで町に根を張っている強みもあるんで、文化委員会としては肩の力を抜いて取り組んでゆきたいと思っています。みなさんのご協力宜しくお願い致します。

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