2018年10月17日水曜日

地震に強い住まいは住宅の耐震診断の結果を踏まえて耐震化対策および住宅再建⑥


震度7の揺れに瓦が落ちたものの倒壊しなかった熊本城の写真
よくぞ持ちこたえた熊本城だが土台は崩壊

熊本地震では震度7の地震が2回も起きました。後の揺れの方が大きく、多くの住宅が倒壊しました。揺れがおさまって「助かった!」と胸をなでおろしたのもつかの間、翌日の本震で倒壊し亡くなった方は少なくありません。



目次

1.自治体による「応急危険度判定」

最初の地震から2~3日の間に大きな地震が起きやすいのです。自宅に戻れるかどうかを判断する目安になるのが、自治体による「応急危険度判定」です。判定士が建物の傾きや柱や壁の状態を調べて、赤黄緑の紙を貼ってゆきます。罹災証明の調査とは別です。
熊本城の建物本体や障壁画に大きな被害はありませんでしたが、石垣は大きく崩れました。建物の耐震は熊本地震のように繰り返し強い地震に見舞われることを想定していません。

大阪北部地震では震度6弱で住宅地に大きな亀裂が入り、家が傾くなどの被害が出ています。土台が6センチずれてふすまと畳が大きく離れ、隙間から床下が見え、廊下を歩くとギシギシ音が鳴り、閉まらなくなった窓の隙間はガムテープでふさいでいます。


「一部損壊」でも住めなくなる

  1. 屋根瓦が大きく損壊、外壁にいくつもひび割れ、ドアが閉まらない(家が傾いた)
  2. 屋根瓦が落ち、全部葺き替えると業者の見積もりは200万円(相場の倍吹っ掛けられる)

「半壊」でも解体しない限り支援法の対象外

壁が大きく剥がれ落ち、窓枠との隙間から隙間風。解体しないと再建支援法の300万円は対象外。

この住宅地は山林を土地開発で住宅に作り替えたものです。雨や余震で亀裂が広がり、市の視察で「住み続けるのは難しい」といわれました。数百万円かけて自宅を耐震補強しても道路が陥没すれば、巡回してきた調査員が「赤色」の警告を貼ります。

こうなると土地を売ろうと思っても売れません。「黄色」の紙を貼られた「一部損壊」は家の修理は自己負担です。最後の綱、生命保険を解約してまでして金の捻出に迫られては死んでも葬儀に当てる金もありません。

「瓦をとりかえるのに200万円かかった」という人がすくなくありません。「半壊」とまではいかないが、修理にすごく金がかかったというひとは多いでしょう。一部損壊でも100万以上かかる家が半分以上もいるのに何も支援がないのでは腑に落ちません。

地震で同じ恐怖を味わったのに一部損壊というだけで支援金はおろか義援金も支給されません。応急修理の補助も「半壊以上」で、国保料減免の対象からも外されます。玉名市は一部損壊で修理費が30万~100万の世帯に修理費10%の災害見舞金を支給しています。10万~30万は3万円です

瓦が落ち修理しないと雨漏りがして住めなくなります。トタン屋根はゆがんで雨漏りします。風呂には段差ができて使えなくなり、水道は不通、車は壊れこれらの修理を自己負担で考えると頭がおかしくなるでしょう。貯えのない人の方が多いのです。

一部損壊に国と県の支援が全くない。在宅被災者の調査もせず被災者と認められないのはおかしい。特に高齢者は自分で支援を求めることをしない場合が多いので外から手を差し伸べないといけないのではないでしょうか。


「一部損壊」世帯への自治体による独自救済支援策(2017年4月13日現在)
合志(こうし)市---50万円以上の復旧工事に対し5万円分の商品券
宇城(うき)市------30万円以上の工事に3万〜5万円の同市復興券
玉名市------------------10万円を差し引いた3分の1を補助(上限20万円)
小国町------------------10万円を差し引いた2分の1を補助(上限10万円)
氷川町------------------20%を補助(上限20万円)
産山村------------------見舞金などとして一律2万円支給 
大津(おおづ)町---10万~30万円未満に3万円、30万円~100万円未満に10%補助

大津町では「一部損壊」の世帯で、修理費の平均は53万円。義援金は行政の支援ではありません。一部損壊の世帯に国と県の支援がまったくない。「慎重に検討すべきもの」と、否定的な考え。被災者の生活再建に目を向けない政府の姿勢を示す。

※資料:しんぶん赤旗

これから建築する場合は、万一沈下しても建物を持ち上げて直しやすい「べた基礎」にし、建物周辺に工事スペースを確保する。建築済みの住宅なら被害にあうのを覚悟の上で地震保険に入ったほうがいいと思います。
地震で自宅が壊れたら仮設住宅へ行くか?そのまま住み続けられるのか?それは損害の程度によりますが、損害を調べる公的制度は複雑です。事前に予備知識を得ておくことはいざというときのためになります。

2.「罹災証明書」を発行してもらう

罹災証明書


地震や風水害などの自然災害で住宅が被害を受けた住民に、市町村が発行を義務づけられています。これにより、仮設住宅入居申し込み、住宅の応急処理、支援金の支給、義援金の配分、税金・保険料、公共料金の減免・猶予、住宅を再建するための融資などにも必要になります。

被災者の生活再建全般にかかわるもので、重要な証明書です。そのため災害対策基本法で罹災証明書の速やかな発行を市町村長に義務付けています。巨大地震では申請の受付に時間がかかり、受付後の被害状況調査も進まず、証明書の発行が遅れる可能性があります。

市町村任せにせず、政府や県が職員を派遣するなど、責任をもって手当を講じることです。


被災検知物の応急危険度判定


地震直後から1週間ほどの間に実施される。余震で倒壊したり、屋根などが落下して2次災害が起きないよう市町村指定の判定士(講習を受けた建築士)が住民や通行人に危険を知らせるため建物に色紙を貼ってゆく。住宅そのものに被害がなければ「全壊」「半壊」にもならない。

  1. (危険)------隣家が倒れ掛かっている。建物自体に問題がなくても、瓦が落ちる恐れや、隣家が倒れる恐れがあるなど。赤が貼られてあわてて解体しても助成はうけられない。
  2. (要注意)---立ち入りや修復は専門家と相談すること。
  3. (調査済み)--建物は使用できる。


家屋被害認定調査


地震後1か月をめどに受ける。「罹災証明書」の交付のために実施されます。公的な支援金などを受けるために必要で、市区町村の職員らが屋根や壁などを調べて、全壊、大規模半壊、半壊、半壊に至らない(一部損壊)などに認定する。

1次調査;建物の外観で見る
2次調査;内部も含めて詳しくしらべるため被害程度が重くなる場合が多い。
3次調査;2次から再調査


被災度区分判定


被災後1か月~数か月後、建築士らが、住宅に耐震性が残っているかや、必要な修繕をを判定。民間建築士らとの契約(費用がかかる)。

住宅の状況を確認

目立った損害はない→そのまま住み続ける
 修繕して住む⇘
修繕すれば住める        
↳ 引っ越しする⇒    まずは
↱新築する   ⇒   「罹災証明書」を申請する
全壊・修繕は無理
↳賃貸物件を探す⇗



3.罹災証明書に必要な書類

書類


  1. 罹災証明申請書(申請窓口に備え付け)
  2. 身分証明書(免許証や国保など)
  3. 被害状況がわかる写真
🔻
各市町村窓口に申請します

罹災証明書の発行されるまで

応急危険度判定を受ける
🔻
罹災証明書の申請
    🔻
調査員による現場調査
    🔻
被害程度の認定
    🔻
罹災証明書の発行
    🔻
各種支援制度の利用



被害割合


全壊-----50%以上-----建物全体が倒壊、建物としての機能を失ったもの、補修しても百戸通りにならない。被災者生活再建支援法から最高300万円支給されるが、再建よりも解体費用で消えてゆく。

大規模半壊-----40%~50%----構造上主要な柱・壁などの大掛かりな修繕をしないと住めない。

半壊-----20%~40%----損壊は大きいが修繕すれば住める。

一部損壊-----20%未満-----半壊にいたらない。

※認定に不満がある時は再調査を要求できる。

災害救助法

「災害にかかった者の保護と社会の秩序の保全を図ること」が目的。
在宅でも仮設でも支援が受けられるのは当然です。被災者生活再建支援制度は半壊以下の人への支援がなく、現場のニーズと開きがあり改善の必要があります。

がれき撤去は公費で

がれきの撤去が公費で出るなら、すぐにでも業者に頼みたいが、はっきりしないので迷っていると答える被災者は多いでしょう。通常、災害で民家に流入したがれきを個人で撤去すると費用が自己負担とされてきました。

政府は今回、撤去費用を全額、事後清算に応じる方針を示していますが、その実施要項は明らかでなく、市町村の対応がまちまちなのだ実情。環境省の通達が、支援対象を「前回家屋や宅地内」としている。被災者が生活再建できるよう、幅広い救済ができるように国にも市にも働きかける。

4.一部損壊に県独自の支援

家屋損壊

瓦は落ち、外壁にヒビが入り、床が波打っても「一部損壊」の認定です。修理費用に300万円近くかかることがわかっても、国の支援金がでる「半壊」よりも実費負担が大きいというのはどういうことでしょうか。


倒壊を免れたとしても、戸建て住宅は沈下したり傾いたりします。水平方向で1mで1㎝、角度にして0.6度弱の傾きで済む人が平衡感覚を失い苦痛を感じるようになりますが、これを修復するのに最低でも数百万円はかかるでしょう。

ひとたび南海トラフ巨大地震が起これば、「一部損壊」は
約80%占めるでしょう。家屋被害を受けた被災者の多くが、国の支援の対象外になるのです。義援金を貰えたとしてどうにもなりません。貯金を使い果たしたら、生活はどうなるのか不安になります。

鳥取中部地震では、全壊に最大300万円、半壊に最大150万円、一部損壊に最大30万円、軽微な破損に最大5万円を支給しました。一部損壊の給付は全国で初めてです。

猛暑の下、土ぼこりチリの中での復旧作業。健康被害がでる。アレルギー結膜炎、汗がでてアトピー性皮膚炎、軽い熱中症で点滴。

大阪北部地震では、市役所には罹災証明書の申請、被災者支援総合窓口、住宅相談会場に多くの市民が訪れました。「どこに修理を頼めばいいか」「補助はあるのか」という相談が多い。家の前が通学路で屋根のブルーシートが風であおられてはずれてしまわないか心配で気が休まらないといいます。

家屋の改築や補修などに要する経費の補助は、それまでの国の制度では、半壊以上の住宅の解体費用には充てることができるが、後に残る個人の財産に公の資金を入れることはできなかった。

新築・改築の費用はだめ、解体でなければだめという。国はすぐ経費の拡大を恐れてしまう。全国で一斉に同じ災害が起こったら予算がなくなって困る、というような発想をしてしまいがちだ。

住宅再建にはただでさえ建築費が高騰します。消費税が10%になったらなおさらです。坪単価は今の50万円から70万以上になるのは目に見えています。30坪の家なら600万円もの負担増です。国が住宅再建の支援金を現行の300万円から500万円に引き上げるのは当然です。

一部損壊と判定された世帯では、ほとんどが「納得しない」でしょう。修理費用は100万~300万円もかかるのです。「一部損壊」への支援は県だけでなく国の支援は必要です。

東日本大震災で被災者が修繕にかけた費用
50万~300万-----43%
300万~500万---17%
900万以上-------10%



水道水復旧は日にちがかかる

市は「水道が復旧しました」と説明しても「水がこない」ことはざらです。水道管が破損して漏水が多発、水が行き渡らないのです。排水池から送り出す水量が増えているのに水が届かないのはそれだけ漏れていることになります。

耐震管も破損すればどこで漏水が起きているかわからず、掘ってみて初めてわかるのですから復旧の見通しは立たないでしょう。管が破れて水が濁ればトイレには使えますが飲み物に適しません。飲んでもいいかどうか判断は難しいところです。しっかりした情報を知らせることが必要です。

5.住宅のトラブル

住宅のトラブル


Q 借家に亀裂が入り「退去したい」と伝えたら違約金として1か月分の家賃を請求された。

Q ライフラインが止まり壁にひびがはいっている。避難所にいるのに家賃を払うのは納得できない

Q 屋根瓦が飛んだ。業者に屋根をブルーシートで覆ってもらったら請求金額が高すぎて不満。

Q 電気温水器が倒れた。メーカーの取り付け施工書どおりに取り付けられていなかった。
隣家の瓦が落ちて自宅の設備が壊れた。隣人は「自然災害なので費用を負担する必要はないのではないか」という。

Q 大家から「建物が古く、耐震診断で危険がでた。建て替えのため退去してほしい」と言われた。
A 耐震診断は主として、新耐震設計以前の建物が大地震でどのような強さを持つかをISという「指標」で示すものです。0.3以上0.8未満の場合、倒壊・崩落の危険性があるとと判断します。

耐震診断は建物の耐震補強を行うために開発された技術なので、「危険性がある」となれば、耐震補強をするのが正しい判断です。耐震診断だけでは住民に退去を求める理由にはなりません。建て替えではなく補強を要求するのがよいと思います。


    6.屋根の修理は遅れる

    • 需要の急増で業者待ちが続く
    • 屋根の破損は一部損壊と判定されて何の支援もないため修理費が捻出できない人多数
    • 一部損壊というけれど、修理に何百万円もかかる

    津市の耐震補強工事補助


    耐震補強


    木造住宅の耐震補強計画作成に対する補助が増額されました。H24年度から危機管理部の人員が増やされ、2年間の強化期間となる中、浸水地域での耐震補強工事促進のための各戸訪問や市内全戸への耐震診断申込書の配布等が実施され、耐震診断、耐震補強のための補強計画作成が進んでいます。補強計画作成に最高16万円、補強工事はリフォーム助成と併せ最高130万円の助成がでます。

    技術系職員の不足

    国庫負担のある災害復旧事業の認定には国の査定を受ける必要があるが、その基礎資料となる測量や図面作成の作業が追いつきません。図面作成や費用の積算、コンピュータ設計システムの運用ができる技術系は2人。

    それでも査定に手間取り、実際の発注段階で必要となる詳細な設計書の作成に手がまわりません。その作業は民間会社に依頼している。月に数百万の負担になる。


    7.ピロティ構造(1階が駐車場などの空間になっている)

    ピロティが破損した建物でもジャッキで持ち上げて直せます。解体・新築するよりも経済的負担を減らせます。

    設計協同フォーラム事務局長(1級建築士)・・酒井行夫さんの話

    熊本地震で倒れなかった家の写真
    ピロティ構造


    施工上の注意点や地盤の影響など課題も浮かび上がりました。(資料;朝日新聞)
    ×倒壊した建物;筋交いを釘だけで固定。
    ×柱と土台を金属板と釘で簡単につないでいた。
    〇基礎や土台と柱を太いボルトでつなぐ「ホールダウン金物」

    柱と土台を釘でつないだだけで倒壊した家屋
    ホールダウン接続と釘で接続しただけで倒壊した家屋

    地震への備え

    住まいの耐震診断が重要です。耐震診断の結果を踏まえて、耐震補強工事をすることで被害を大幅に減らせます。地震が起きてからどうするかも大事ですが、地震は一瞬で建物が破壊されます。事前防災こそが重要です。

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